「AIが書けるなら、エンジニアいらない」は本当か?

ミドリ: タツヤさん、最近お客さまから「AIがコードを書けるなら、エンジニアの単価も下げられるよね?」って言われることが増えてきて……。これ、SES事業としてどう答えればいいんでしょう?

タツヤ(thinking): うん、それは今いちばん難しい質問だね。結論から言うと、「全員の単価が下がる」わけじゃない。これから起きるのは、下がる人材と上がる人材の二極化なんだ。

ミドリ(confused): 二極化……。同じSESエンジニアでも差がつく、ということですか?

タツヤ: そう。そしてその差は「コードを速く書けるか」じゃなくなる。今日は、自社のエンジニアを「単価が上がる側」に育てるには何が必要かを、具体的に話していこう。

AIで二極化する — 単価が下がる人材・上がる人材

ミドリ: まず、二極化って具体的にどういうことですか?

タツヤ: ざっくり言うとこうだ。

単価が下がる人材単価が上がる人材
仕事の中身指示通りにコードを書くだけ課題を定義し、AIを使って解決する
AIとの関係AIに置き換えられるAIを部下のように使いこなす
評価軸作業量・スピード生み出した価値・成果

ミドリ(thinking): 「言われた通り書く」だけだと、AIと競合しちゃうんですね。

タツヤ: そう。AIが得意なこと(コードを書く)でAIと勝負したら、人間は勝てない。だから勝負するフィールドを変える必要があるんだ。

なぜ「コードが書ける」だけでは単価が守れないのか

ミドリ: でも、コードを書ける技術力って、ずっと価値があったものですよね?

タツヤ: これまではね。でもAIによって「コードを書く」のコストが劇的に下がった。希少だったから高かったスキルが、ありふれたものになりつつある。

ミドリ(surprised): 価値の源が「希少性」だとすると、ありふれた瞬間に値段が下がる……。

タツヤ(nodding): その通り。経済の基本だね。だから単価を守るには、「まだ希少で、AIには代われない価値」にシフトする必要がある。

単価が上がる3つの価値

ミドリ: その「AIに代わられない価値」って、具体的には何ですか?

タツヤ: 大きく3つある。

  1. 上流と業務理解 — 「何を作るべきか」を顧客と一緒に定義する力。AIは「何を作るか」を決められない
  2. AIの使いこなし — AIに的確な指示を出し、出力を検証し、業務に組み込む力。同じAIでも使い手で成果が10倍変わる
  3. コミュニケーションとマネジメント — チームを動かし、顧客の信頼を得る力。人と人の間にこそ残る価値

ミドリ: どれも「コードそのもの」じゃないんですね。

タツヤ(nodding): そう。コードは手段で、価値は「課題解決」にある。この3つを持つエンジニアは、AI時代にむしろ単価が上がっていく。

自社エンジニアの市場価値を「見える化」する

ミドリ: 育てる前に、まず今のうちのエンジニアがどの位置にいるか知りたいです。

タツヤ: いい着眼点。市場価値は「見える化」しないと育てられない。こんな項目で棚卸しするといい。

ミドリ(thinking): スキルシートに「言語Java」って書くだけじゃ足りない、ということですね。

タツヤ: まさに。「何ができるか」より「どんな成果を出したか」。ここを見える化できると、育成の方向も、交渉の材料もはっきりするんだ。

単価交渉を有利にする「根拠」の作り方

ミドリ: 実際の単価交渉では、何があると強いんですか?

タツヤ: 交渉は「お願い」じゃなく「根拠」で決まる。用意すべきはこの3つだ。

ミドリ(surprised): 「相場だから」じゃなく、「この人だからこの価値」で語るんですね。

タツヤ(nodding): そう。単価は「市場相場」と「個別の価値」の掛け算。後者を積み上げられる会社が、価格競争から抜け出せるんだ。

育成:明日から現場でできること

ミドリ: 大がかりな研修は難しいんですけど、現場でできることはありますか?

タツヤ: 日常の中でできることは多い。

ミドリ(thinking): 特別なことじゃなく、日々の仕事の延長で育てられるんですね。

タツヤ: そう。育成は研修室じゃなく現場で起きる。小さな「一歩上流」「一歩AI活用」の積み重ねが、市場価値を押し上げるんだ。

営業側:価値を「翻訳」して提案する

ミドリ: 営業としては、その価値をどう顧客に伝えればいいでしょう?

タツヤ: エンジニアの価値を、顧客の「困りごと」の言葉に翻訳するのが営業の仕事だ。脱エンジニアの視点で考えると、技術スペックを並べるか、顧客の課題解決に翻訳して提案できるか、ここが分岐点になります。「Java歴5年」ではなく「御社の障害対応コストを下げられる人材」と語れるかどうか。後者で語れる営業が、高単価を実現する。

ミドリ: スキルの羅列じゃなく、お客さまのメリットに変換する、と。

タツヤ(smiling): その通り。顧客が買っているのは「技術」じゃなく「成果」。そこを翻訳できれば、単価交渉の景色が変わるよ。

ジュニア層をどう守り、育てるか

ミドリ: 二極化って聞くと、経験の浅いジュニアのエンジニアがいちばん不利になりそうで心配です……。

タツヤ: 鋭い心配。たしかに「言われた通り書くだけ」の作業は、まずジュニアの仕事から減っていく。でもね、AIはジュニアにとって最高の追い風にもなるんだ。

ミドリ(confused): 不利なのに、追い風……? どういうことですか?

タツヤ: 昔は、上流の設計やレビューはベテランの特権だった。でもAIを「先生役」に使えば、ジュニアでも一気に上流の経験を積める。AIが下支えするぶん、人間は早い段階から"考える仕事"に踏み込めるんだ。

ミドリ(thinking): AIに作業を任せて、人間は早くから上流を学ぶ、と。

タツヤ(nodding): そう。だから会社がやるべきは、ジュニアを「作業要員」に固定しないこと。最初から「課題を考える」「AIを使いこなす」訓練の場を与える。守るとは、楽をさせることじゃなく、価値の高い仕事に早く触れさせることなんだ。

顧客が本当に評価するポイントの変化

ミドリ: お客さま側が評価するポイントも、変わってきているんでしょうか?

タツヤ: 大きく変わってる。昔と今で、こんな違いがある。

昔、評価されたものこれから評価されるもの
言語・フレームワークの経験年数課題を解決した実績
作業をこなすスピードAIを使った生産性の高さ
指示通りに動くこと自ら提案・改善できること

ミドリ(surprised): 「何年やったか」より「何を解決したか」なんですね。

タツヤ: そう。顧客はもう「手を動かす人」が欲しいんじゃない。「成果を出してくれる人」が欲しい。だから自社エンジニアを売るとき、語る言葉も変えなきゃいけない。経歴書を「成果の記録」に変えるだけで、同じ人材でも見え方がまったく違ってくるんだ。

モデルケース:同じ経歴でも、単価が変わった話

ミドリ: もう少しイメージが湧くように、具体例で教えてもらえますか?

タツヤ: たとえば、同じ「Java歴5年」の二人のエンジニアがいたとする。一人は、案件で言われた通りに開発をこなしてきた。もう一人は、同じ開発をしながらAIを使って生産性を上げ、さらに「この業務はこう改善できます」と顧客に提案してきた。経歴書の言語欄は、二人とも同じ「Java、5年」だ。でも後者は、提案で顧客の障害対応コストを下げた実績を、数字で語れる。

ミドリ(thinking): 同じスキル表記でも、語れる中身がまるで違うんですね。

タツヤ: そう。顧客から見れば、後者は「ただの開発者」じゃなく「課題を解決してくれるパートナー」だ。当然、単価交渉の景色も変わってくる。違いを生んだのは才能じゃない。日々の仕事で「成果を意識し、言語化してきたか」という積み重ねなんだ。誰にでも、今日から始められる差なんだよ。

営業と現場が組んで「価値」を作る

ミドリ: これって、現場のエンジニアだけの努力じゃ難しいですよね。

タツヤ: その通り。市場価値は、現場と営業の二人三脚で作るものなんだ。現場は成果を出し、それを言葉にして記録する。営業はその記録を、顧客の課題の言葉に翻訳して提案する。どちらが欠けても単価は上がらない。「いいエンジニアがいる」だけでも、「営業がうまい」だけでもダメ。両輪がかみ合って初めて、価格競争から抜け出せるんだ。

ミドリ(nodding): 現場と営業が、同じ「価値の言葉」を共有することが大事なんですね。

タツヤ: そう。社内で「価値の翻訳」がそろっている会社は強い。エンジニアが出した成果が、そのまま営業の武器になり、単価に跳ね返る。この循環を作れるかどうかが、AI時代のSES経営の分かれ目だよ。

まとめ

タツヤ: 今日のポイントを整理しよう。

ミドリ: AIは脅威じゃなくて、むしろ「価値の差」を広げる追い風にもできるんですね。

タツヤ: そう。AIに仕事を奪われる側に回るか、AIを使って単価を上げる側に回るか。その分かれ道を、会社として意図的に設計できるかどうか。それがこれからのSES経営の腕の見せどころだよ。

次のアクション

自社エンジニアの市場価値を高めるために、この順で動きましょう。

  1. 市場価値の棚卸し — 工程・AI活用度・顧客接点・成果の言語化で、現状を見える化する
  2. 成果を数字にする習慣化 — 週報に「AIで削減した時間」「解決した課題」を書く運用を始める
  3. 提案の言葉を変える — スキル羅列から「顧客の課題をどう解決するか」へ提案資料を作り直す

Shimanto AI Solutions では、SES事業者向けに以下を支援しています。

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