SESのスキルシート管理、13,171名のデータで見えた「不都合な真実」

ミドリ(surprised): タツヤさん、SESの営業って「スキルシートを送る」のが仕事の基本じゃないですか。でも先輩から「スキルシートの管理が地獄」って聞いたんですけど、そんなに大変なんですか?

タツヤ(nodding): いい質問だね。実はこの前、BP(ビジネスパートナー)エンジニア13,171名分のデータを実際に分析したんだけど、衝撃的な結果が出たんだよ。

ミドリ(smiling): 1万3千名!? すごい規模ですね。どんな結果だったんですか?

タツヤ: 即座に提案に使える状態のスキルシートは、全体のわずか12%だった。

ミドリ: ……え、12%だけ? じゃあ残りの88%は?

タツヤ: 77%はメール本文やGoogleスプレッドシートのリンクからテキスト抽出が必要で、10%に至ってはデータすらない状態だったんだ。

最大の壁:Googleスプレッドシートのリンク問題

ミドリ(thinking): 77%がテキスト抽出が必要って、具体的にはどういうことですか?

タツヤ: 一番多かったのが、メールにGoogleスプレッドシートのリンクだけが貼られてるパターン。これが全体の66.9%を占めてた。

ミドリ: リンクがあるなら開けばいいんじゃないですか?

タツヤ: そう思うでしょ。でも問題がいくつもある。まずリンクの権限。「リクエストが必要」で開けないことが頻繁にある。次に、開けたとしても各社バラバラのフォーマットで書かれてるから、そのままでは使えない。さらに、スプレッドシートって複数シートに分かれてたり、セル結合が多用されてたりで、機械的にテキストを抽出するのも一筋縄じゃない。

ミドリ: リンクはあるのに中身が取れない……それが一番多いパターンってことですね。

タツヤ: そう。データがあるように見えて、実は使えない。これがSESのスキルシート管理の最大の闇なんだよ。

フォーマット変換の「手作業地獄」

ミドリ(confused): でも仮にスキルシートが手に入ったとして、それをそのまま提案に使えるんですか?

タツヤ: 使えないんだよ、これが。SES業界には「スキルシートのフォーマット変換」っていう、ものすごく非生産的な作業が存在する。

ミドリ: フォーマット変換?

タツヤ: BPさんから届くスキルシートは、当然その会社独自のフォーマットで書かれてる。でも元請SIerに提出するときは、自社のフォーマットに書き直す必要があるんだ。これが本当に手作業で大変。

ミドリ: コピペじゃダメなんですか?

タツヤ: 項目の並び順も、書き方のルールも全然違うからね。たとえばA社のスキルシートでは「Java 5年」って書いてあるのを、自社フォーマットだと「プログラミング言語」の欄に「Java」、「経験年数」の欄に「5年」って分けて入力しないといけない。しかもエンジニア1人分で30分〜1時間かかることもザラ。

ミドリ: 1人30分として、100名分だと50時間……。

タツヤ(confused): しかもそれが日常的に発生するわけ。案件が来るたびに「このエンジニアのスキルシート、うちのフォーマットに直して」ってなる。

社名入りスキルシートが敬遠される理由

ミドリ: ちなみにBPさんのスキルシートをそのまま出せば、変換作業は不要ですよね?

タツヤ: 理屈上はそうなんだけど、実務では社名入りのスキルシートは敬遠されるんだよ。

ミドリ(thinking): なぜですか?

タツヤ: 元請SIerへの提出義務があるからね。BP企業の社名が入ったスキルシートをそのまま出すと、「この人はどこの会社経由で来てるんだ?」って商流が透けてしまう。元請からすると「中間マージンを抜いてる会社が何社あるんだ」って話になりかねない。

ミドリ(nodding): なるほど、だから自社フォーマットに書き直す必要があるんですね。

タツヤ: そういうこと。商流を意識した「きれいな」スキルシートに仕上げる作業が、SES営業の隠れた工数として存在してるんだ。

オンライン面談時代のスキルシート

ミドリ: コロナ以降、面談もオンラインが主流ですよね。スキルシートのフォーマットって影響ありますか?

タツヤ: 大ありだよ。TeamsやZoomでの面談が当たり前になった今、画面共有で映したときに見やすいフォーマットが重要になってる。

ミドリ: 紙で配る前提と画面共有前提じゃ、レイアウトが違いますよね。

タツヤ: まさに。A4縦でびっしり書いてある従来型のスキルシートは、画面共有だと字が小さすぎて読めない。フォントサイズ、余白、セクション分けまで、オンライン面談を前提にデザインし直す必要がある。

ミドリ: それもまた手作業で……。

タツヤ: そう。エンジニアの技術力が高くても、スキルシートが見づらければ面談での印象が下がる。見せ方で損してるエンジニアは想像以上に多いんだよ。

AI活用で何が変わるのか

ミドリ: ここまでの話を聞いてると、もう人手では限界ですよね。AIで解決できるんですか?

タツヤ: できる。しかもかなり実用的なレベルで。大きく3つのアプローチがある。

1. スキルシートの構造化・自動変換

タツヤ(nodding): まず、バラバラのフォーマットで届くスキルシートをAIが読み取って、統一フォーマットに自動変換する。メール本文、PDF、Googleスプレッドシート、どんな形式で来ても、AIが「名前」「スキル」「経験年数」「単価」「勤務地」「希望勤務形態」を構造化データとして抽出する。

ミドリ: 人間がコピペしてた作業をAIがやってくれる、と。

タツヤ: そう。しかも1件あたり数秒で終わる。人間が30分かけてた作業が、ほぼゼロコストになるんだ。

2. テキスト抽出の自動化

タツヤ: さっき話した66.9%のGoogleスプレッドシートリンク問題。これもAPIを使ってシートの中身を自動取得し、テキストとして抽出できる。権限の問題はあるけど、自動リクエストの仕組みを組み込めば、手作業で1件1件開く必要はなくなる。

ミドリ: 66.9%が救えるのは大きいですね。

3. アピールポイントの自動生成

タツヤ: これが一番インパクトがあるかもしれない。AIがスキルシートの内容を読んで、そのエンジニアのアピールポイントや紹介文を自動生成してくれるんだ。

ミドリ: 紹介文って、営業が書くやつですか?

タツヤ: そう。「Javaでの開発経験10年、特に金融系の大規模システム刷新プロジェクトに強みがあり、PMOとしてのマネジメント経験も豊富です」みたいな文章を、スキルシートの内容からAIが自動で作ってくれる。

ミドリ(smiling): それは営業としてはかなり助かりますね。

タツヤ: しかも面談前に画面共有で見せる前提の、読みやすい要約形式で出力することもできる。オンライン面談時代にぴったりなんだよ。

12%を100%に近づけるロードマップ

ミドリ: じゃあ最終的には、13,171名全員のスキルシートが使える状態になるってことですか?

タツヤ: 理想はそうだね。現実的なロードマップとしては3段階ある。

フェーズ1:既存データの構造化(即効性あり)

タツヤ(nodding): まずメール本文にスキル情報が含まれている層。ここはAIで即座に構造化できる。これで12%から約50%まで引き上げられる。

フェーズ2:リンク先の自動取得(中期)

タツヤ: 次にGoogleスプレッドシートやドキュメントリンクの中身を自動取得する仕組みを構築する。これで66.9%のリンク問題を解消して、提案可能な割合を80%以上に持っていける。

フェーズ3:データなし層への対応(長期)

タツヤ: 残り10%のデータなし層は、BP企業に再送を依頼するワークフローを自動化する。「スキルシート未受領リスト」を自動生成して、テンプレートメールで定期的にリマインドする仕組みだね。

ミドリ: 段階的に潰していくんですね。

まとめ:スキルシート管理は「営業の基盤」

ミドリ: 今日の話を聞いて、スキルシートの管理って単なる事務作業じゃなくて、営業の根幹なんだなって思いました。

タツヤ(nodding): その通り。提案スピード、マッチング精度、面談での印象、全部スキルシートの質と管理体制にかかってる。13,171名中12%しか即座に使えないっていう現実は、裏を返せば88%に改善余地があるってことだからね。

ミドリ: AI活用で自動化すれば、営業が本来やるべき「提案」と「関係構築」に集中できるようになりますね。

タツヤ(confused): まさにそれが目指すべき姿だよ。スキルシートの管理に1日2時間使ってた営業が、その2時間を提案活動に回せたら、成約率は確実に上がる。テクノロジーで解決できる問題は、さっさとテクノロジーに任せるべきなんだ。

ミドリ: タツヤさん、今日もめちゃくちゃ勉強になりました!

タツヤ: スキルシート管理に悩んでる企業は本当に多いから、この記事が少しでも参考になればうれしいね。