AIで作った画像、そのまま商用で使って大丈夫?
ミドリ: タツヤさん、うちの販促チラシの背景をAIで作ってみたんですけど、これって商用利用しても大丈夫なんでしょうか。
タツヤ(nodding): いい確認だね。結論から言うと多くのケースで使える。ただ、確認すべきことが3つあって、そこを飛ばすと危ない。
ミドリ: 3つ、ですか。
タツヤ: ①ツールの利用規約 ②自分に権利が生まれるか ③他人の権利を侵していないか。この3つは全部別の話なんだ。まとめて「著作権」と呼んでしまうから混乱する。
ミドリ(thinking): たしかに、ごちゃ混ぜに考えていました。
タツヤ: 順に整理していこう。
①ツールの利用規約 — 一番先に見る
ミドリ: まず規約なんですね。
タツヤ: ここが最初。法律以前に、そのツールが商用利用を許しているかを見る。
- 無料プランは商用不可というツールがある
- 生成物の権利がツール側に残るという条項がある場合がある
- 生成物を学習に再利用するという条項が入っていることもある
- クレジット表記が必要なケースもある
ミドリ(surprised): 無料プランだと使えないことがあるんですか。
タツヤ: ある。しかも規約は改定されるから、業務で使うなら年に1回は読み直したほうがいい。うちでは使用ツールと商用可否を一覧表にして管理している。
ミドリ: 表にしておくと、確認が早いですね。
タツヤ(nodding): 現場が「このツールは使っていいんだっけ」で止まらなくなる。判断を毎回させないのが、ルール設計のコツなんだ。
②自分の生成画像に著作権は生まれるか
ミドリ: 自分で作ったんだから、権利は自分にあるんじゃないんですか?
タツヤ(thinking): そこが直感と少しずれるところでね。日本の考え方としては、「AIが出しただけのもの」には著作権が認められにくいとされている。
ミドリ: どういう基準ですか?
タツヤ: ざっくり言うと人間の創作的な関与がどれだけあったか。
| ケース | 著作権が認められる可能性 |
|---|---|
| 「猫の絵」と入力して出てきたものをそのまま使う | 低い |
| 構図・色調・スタイルを細かく指定し、何十枚から選別 | 相対的に高い |
| 生成後に人間が加筆・修正・合成した | 相対的に高い |
ミドリ: 手をかけるほど認められやすい、と。
タツヤ: そういう傾向だね。実際、2025年11月には生成AI画像を無断複製して書籍表紙に使った事案で書類送検された例もあって、プロンプト調整や修正といった制作者の創作性が認められる場合には保護されうる、という判断が示されている。
ミドリ(surprised): 摘発された事例があるんですね……。
タツヤ: つまり「AIが作ったものだから誰のものでもない」は通用しないということ。人が手をかけたAI生成物を勝手にコピーすれば問題になりうる。逆も同じで、他人のAI生成物を拾って使うのも危ない。
実務での対応
ミドリ: うちが守る側になるには、どうすれば?
タツヤ: 記録を残す。これに尽きる。
- 使ったツールとプラン
- 入力したプロンプト
- 生成された候補と、選んだ理由
- 加筆・修正した内容
ミドリ: けっこう細かいですね。
タツヤ(nodding): でも、スプレッドシート1行で済む。画像ファイル名・日付・ツール・プロンプト・編集内容。この5列があれば、後から説明できる。説明できる状態にしておくことが、実務上いちばん強い防御なんだ。
③他人の権利を侵していないか — ここが本命
ミドリ: 3つ目が一番大事だと言っていましたよね。
タツヤ: そう。自分に権利があるかどうかは、最悪なくても困らない。でも他人の権利を侵していたら、公開を止められるし賠償の話になる。
ミドリ: どういう時に起きますか?
タツヤ: 典型は4つ。
- 既存キャラクターに似てしまう — 特定の作品名やキャラ名をプロンプトに入れると起きやすい
- 実在の人物に似てしまう — 有名人の名前を入れた場合はもちろん、意図せず似ることもある
- 他社ロゴやブランド要素が混ざる — 背景の看板や商品パッケージに紛れ込む
- 既存の写真構図とほぼ同じになる — 有名な写真の構図を指定した場合
ミドリ(thinking): 「意図せず似る」が怖いですね。
タツヤ: だから公開前に人間が見る工程を絶対に外さない。見るポイントはこの4つだけ。慣れれば1枚10秒で確認できる。
ミドリ: プロンプトに固有名詞を入れないのも大事ですか?
タツヤ(nodding): 大事。「○○風」「○○みたいな」という指定は、業務では使わないルールにしておくのが安全だと思う。雰囲気を言葉で説明する癖をつけると、結果的にオリジナリティも上がるよ。
用途別のリスク
ミドリ: 使う場所によっても違いますか?
タツヤ: 変わる。同じ画像でも用途でリスクが変わるんだ。
| 用途 | リスク | 注意点 |
|---|---|---|
| 社内資料の挿絵 | 低い | 外部に出ないなら実害が出にくい |
| ブログのアイキャッチ | 中 | AI生成の表示があると親切 |
| 販促チラシ・広告 | 高い | 商品の見た目を誤認させないこと |
| 商品パッケージ | 非常に高い | 権利確認を厳格に。専門家確認を推奨 |
| ロゴ・商標 | 使わない | 独自性の証明が困難。商標登録に影響 |
ミドリ(surprised): ロゴは使わないほうがいいんですね。
タツヤ: ロゴは長く使う資産だからね。後から権利関係で問題が出ると、看板・名刺・サイトを全部作り直すことになる。取り返しのつかないものはAIに任せない、という原則で考えるといい。
脱エンジニアの視点で考えると、「その画像は何年使うものか」を基準に判断できるかが分岐点になります。 1回のSNS投稿なら軽く扱える。10年使うロゴなら慎重にやる。リスクの大きさは、技術ではなく用途と期間で決まるからね。
社内ルールは5工程で作る
ミドリ: うちの社内ルール、どう作ればいいですか?
タツヤ: 実務では5つの工程で組み立てるのが定着してきている。
- ツール選定 — 商用可のツールを会社として指定する。個人判断で増やさない
- プロンプト設計 — 固有名詞・作品名・人物名を入れない。禁止ワードを共有する
- 人間確認 — 公開前に4観点でチェック(既存キャラ・実在人物・他社ロゴ・既存構図)
- ログ保管 — ツール・プロンプト・編集内容を記録する
- 契約設計 — 外注先が納品物にAIを使う場合の取り決めを契約に入れる
ミドリ: 5つ目、盲点でした。
タツヤ(nodding): 意外と多いんだよ。外注したデザインに、実はAI生成物が含まれていたというケース。契約書に「AI利用の有無を申告する」「権利侵害がないことを保証する」と一行入れておくだけで、責任の所在がはっきりする。
素材サイトとの使い分け
ミドリ: そもそも、有料の素材サイトを使えば済む話じゃないですか?
タツヤ(nodding): それも正解のひとつだよ。AI生成が万能なわけではないからね。使い分けを整理するとこうなる。
| 場面 | 適した手段 | 理由 |
|---|---|---|
| 汎用的なビジネス写真 | 素材サイト | 探すほうが速い。権利も明確 |
| 自社の業種特有の場面 | AI生成 | 素材サイトに該当する写真がない |
| 特定の構図・色調が必要 | AI生成 | 細かい指定ができる |
| 実在の商品・人物 | 実写撮影 | どちらでも代替できない |
| 大量に必要(月50点以上) | AI生成 | 素材サイトの点数制限にかかる |
ミドリ(thinking): 素材サイトのほうが速いケースもあるんですね。
タツヤ: 「会議しているビジネスパーソン」みたいな定番は、探すほうが圧倒的に速い。AIで作ると指の本数を確認したり、何度も作り直したりで時間がかかる。
ミドリ(smiling): たしかに、便利だから全部AIでとなりがちです。
タツヤ: そこが落とし穴でね。AI生成の本当の強みは「世の中に存在しない画像」を作れること。自社の特殊な業務風景とか、抽象的な概念図とか。素材サイトにあるものをわざわざ作る必要はないんだ。
外注する場合の注意
ミドリ: デザインを外注する時はどうですか?
タツヤ: 契約に一行入れておくのが実務的。
【契約書に入れる文言の例】
- 納品物の制作に生成AIを使用した場合は、その旨と使用ツールを報告すること
- 納品物が第三者の権利を侵害していないことを保証すること
ミドリ: 使用を禁止するわけではないんですね。
タツヤ(nodding): 禁止しても実効性がないし、そもそもAIを使うこと自体は問題じゃない。問題は把握できていないこと。報告してもらえば、こちらでも確認できる。
ミドリ: 隠されるほうが困ると。
タツヤ: そう。禁止すると隠れる。これはシャドーAIの問題とまったく同じ構造だね。申告すれば通る仕組みにするほうが、結果的に把握できるんだ。
よくある誤解
ミドリ: 勘違いしやすいポイントもありますか。
タツヤ: 4つある。
- 「AIが作ったから著作権は発生しない=自由に使える」 — 他人の権利を侵していないかは別問題。無関係
- 「有料プランなら何でもOK」 — 規約で商用可でも、出力内容の権利侵害までは免責されない
- 「加工すれば大丈夫」 — 元が他人の作品に似ていれば、加工しても解消しないことがある
- 「AIと明記すれば免責される」 — 表示は誠実さの問題であって、権利侵害の免罪符ではない
ミドリ(thinking): 最後のは特に誤解しそうです。
タツヤ: 表示はプラットフォームのルールを守るためと利用者への誠実さのため。権利の問題とは別レイヤーだと覚えておくといい。
まとめ
タツヤ: 今日の要点を整理しよう。
- 確認すべきは①ツール規約 ②自分に権利が生まれるか ③他人の権利を侵していないかの3つ。全部別の話
- 簡単な指示で出たものには著作権が認められにくい。細かい指定・選別・加工があると認められる余地が出る
- 人が創作性を加えたAI生成物の無断複製で書類送検された事例がある。「AI製=フリー素材」ではない
- 一番危険なのは他人の権利の侵害。既存キャラ・実在人物・他社ロゴ・既存構図の4観点を公開前に人間が確認
- プロンプトに固有名詞を入れないルールが効く
- 判断基準はその画像を何年使うか。ロゴなど長期資産にはAI生成を使わない
- 社内ルールはツール選定 → プロンプト設計 → 人間確認 → ログ保管 → 契約設計の5工程
ミドリ(smiling): 怖い話かと思ったら、やることは意外と具体的ですね。
タツヤ: そう。ルールがないから怖いだけで、決めてしまえば普通の業務になる。むしろルールを先に作った会社のほうが、安心して活用の幅を広げられるよ。
次のアクション
ミドリ: 明日から何をしましょう。
タツヤ: この3つから。
- 社内で使っている画像生成ツールを洗い出し、商用可否を一覧表にする — 1時間。個人利用の分も含めて聞く
- 公開前チェックの4観点を1枚の紙にして共有する — 既存キャラ・実在人物・他社ロゴ・既存構図
- ログ保管用のスプレッドシートを作る — 日付・ファイル名・ツール・プロンプト・編集内容の5列だけ
タツヤ: Shimanto AI Solutionsでは、この整備を支援しているよ。
- 利用ツールの棚卸しと規約確認 — 会社として使ってよいツールを整理し、一覧化する
- 社内ガイドラインの作成 — 5工程に沿った運用ルールを、現場が守れる粒度で文書化する
- 外注契約への条項追加支援 — 納品物のAI利用申告と権利保証を契約に反映する
ミドリ: 一覧表からですね。
タツヤ: そう。何を使っているか把握していない状態が、いちばんリスクが高いからね。
本記事は一般的な考え方の整理であり、法的助言ではありません。実際の判断は個別事情によって変わるため、重要な用途では弁護士など専門家への確認をおすすめします。
参考にした情報
執筆時点(2026年8月)に確認した資料です。著作権の判断は個別事情に左右されるため、重要な用途では必ず専門家にご確認ください。
- 著作権制度に関する情報 — 文化庁(「AIと著作権に関する考え方について」の一次情報)
- 生成AIで作った文章・画像は著作権侵害になる?侵害事例・対策・文化庁見解を解説 — LegalOn Technologies
- 生成AIと著作権の完全ガイド2026|文化庁2段階フレーム×5層防御 — 株式会社renue(本文の「5工程」はこの整理を参考)