提案資料に半日かかるのは、何が原因?
ミドリ: タツヤさん、お客様向けの提案資料を作るのに毎回半日かかってしまうんです。AIで速くなりますか?
タツヤ(nodding): 速くなるよ。うまくやれば30枚で30分くらいまで縮む。ただし丸投げすると失敗するんだ。
ミドリ: 「提案資料を作って」だけではダメですか。
タツヤ: ダメ。出てくるのはきれいだけど中身のないスライドになる。原因は、資料作成が実は3つの別の作業だからなんだ。
ミドリ(thinking): 3つ、ですか。
タツヤ: 構成・文章・デザイン。この3つを同時にやろうとするから遅い。人間でもAIでも同じなんだよ。
3工程に分解する
ミドリ: それぞれ、どういう作業ですか?
タツヤ: こう分けられる。
| 工程 | 中身 | 従来の時間 | AI適性 |
|---|---|---|---|
| ①構成 | 何を何枚でどの順に話すか | 60分 | 高い |
| ②文章 | 各スライドの見出しと本文 | 90分 | 高い |
| ③デザイン | レイアウト・図解・配色 | 120分 | 中 |
| ④固有情報 | 相手の課題・自社実績・価格 | 30分 | 低い(人間が持つ) |
ミドリ(surprised): デザインが一番時間かかってるんですね。
タツヤ: そう。しかも多くの人は①を飛ばして③から始める。スライドを1枚作って、次を作って……と進めるから、途中で構成がおかしいことに気づいて作り直す。これが半日かかる最大の原因なんだ。
ミドリ(thinking): 先に全体を決めていない、と。
タツヤ(nodding): 構成に60分かけると、残りが劇的に速くなる。これはAIを使う場合も同じ。順番を守るのが一番のコツだね。
①構成をAIと作る
ミドリ: 構成はどう作るんですか?
タツヤ: AIに全体像を出させて、人間が並べ替える。渡す材料はこれ。
【渡す情報】
- 相手の会社・業種・規模
- ヒアリングで聞いた課題(箇条書きでいい)
- 提案するサービスの概要
- 想定の提案金額と期間
- 提案の場の条件(何分・誰が聞く・その場で決まるか)
【出させるもの】
- スライドの構成案(タイトルと1行説明のみ)
- 各スライドの狙い(この枚で相手に何を思ってほしいか)
- 想定される質問と、どのスライドで答えるか
ミドリ: 「各スライドの狙い」を出させるんですね。
タツヤ: ここが効く。狙いが書けないスライドは、要らないスライドなんだ。構成案が20枚出てきて、狙いを見ると5枚は「情報を伝える」しか書いていない。それは削っていい5枚だと分かる。
ミドリ(smiling): 削る判断材料になるんですね。
タツヤ: 資料作成の8割は、何を入れるかではなく何を入れないかの判断だからね。
「誰が聞くか」で構成が変わる
ミドリ: 「誰が聞くか」も渡すんですね。
タツヤ(nodding): これで構成が全然変わる。
| 聞き手 | 構成の重心 |
|---|---|
| 現場担当者 | 使い方・手順・移行の負担 |
| 部門長 | 効果・工数・リスク |
| 経営者 | 金額・回収期間・意思決定に必要な情報 |
| 情報システム部 | セキュリティ・既存システムとの連携 |
ミドリ: 同じ提案でも、見せ方が違うと。
タツヤ: 同じ内容を4通りに作り分けるのは、人間には手間だけどAIには一瞬。ここは大きな効率化ポイントだよ。
②文章を作る
ミドリ: 構成が決まったら文章ですね。
タツヤ: そう。ここでのコツは1スライド1メッセージを守らせること。
- ✕ 「導入効果と費用と導入手順」を1枚に詰める
- ○ 1枚につき伝えたいことを1つ
ミドリ: 詰め込みがちです……。
タツヤ(thinking): 枚数を減らそうとして詰め込むと、逆に伝わらなくなる。枚数は増えていい。1枚あたりの情報量を減らすほうが、結果的に説明時間は短くなるんだ。
ミドリ: 見出しの書き方にコツはありますか?
タツヤ: ある。見出しだけ読んで話の流れが分かるようにすること。
- ✕ 「現状の課題」「解決策」「導入効果」
- ○ 「見積作成に月40時間かかっている」「入力を1回に減らせば12時間になる」「初年度で人件費140万円分が浮く」
ミドリ(surprised): 見出しが文章になっていますね。
タツヤ(nodding): 見出しを読むだけで提案が伝わる状態が理想。決裁者は資料を送られても全部は読まないからね。見出しだけ拾い読みして判断される前提で作る。
③デザインをどうするか
ミドリ: デザインもAIでできますか?
タツヤ: ここは「作らせる」より「使い回す」ほうが速い。
ミドリ: どういうことですか?
タツヤ: 自社のテンプレートを1回だけ作り込んで、以後はそこに流し込む。デザインを毎回考えるから時間がかかるのであって、型が決まっていれば流し込むだけで済む。
タツヤ: 用意しておくべき型は6種類だけ。
| 型 | 用途 |
|---|---|
| 表紙 | 提案名・日付・宛名 |
| 見出しのみ | 章の区切り |
| 箇条書き | 一般的な説明 |
| 2列比較 | ビフォーアフター、他社比較 |
| 図解 | 構成図・フロー |
| 数字強調 | 効果・金額の提示 |
ミドリ: これだけで足りますか?
タツヤ: ほぼ足りる。凝ったレイアウトは、作る時間の割に成約率に影響しないからね。中身と、見出しの分かりやすさのほうがはるかに効く。
脱エンジニアの視点で考えると、「その資料でお客様に何を決めてほしいか」を一文で書けるかが分岐点になります。 それが書けていれば構成は自然に決まる。書けないまま作り始めると、何十枚作っても決まらない資料になるからね。
そのまま出すと事故る箇所
ミドリ: 気をつける点はありますか?
タツヤ: 4か所は必ず人が確認する。ここを飛ばすと事故る。
| 箇所 | 何が起きるか |
|---|---|
| 金額・期間 | AIが根拠なく数字を作る。見積と食い違う |
| 実績・事例 | 存在しない事例を書く。最悪の事故 |
| 他社との比較 | 事実でない優位性を書く。景品表示法のリスク |
| 相手の会社名・担当者名 | 誤字や別会社の名前が残る。信用に直結 |
ミドリ(surprised): 「存在しない事例」は本当にまずいですね。
タツヤ(nodding): 提案書に架空の導入実績が載っていたという事故は、実際に起こりうる。AIは「それらしい事例」を作るのが得意だからね。だから実績のスライドだけは、必ず社内の実績データベースからコピーするというルールにするのが安全。
ミドリ: AIに書かせない、と。
タツヤ: 書かせない。事実に関わる部分は、AIの守備範囲から外す。これが一番シンプルで確実な対策だよ。
前の案件の名前が残る事故
ミドリ: 会社名の残りって、AIのせいですか?
タツヤ(thinking): AIというより流用の問題だけど、AIを使うと流用が増えるから起きやすくなる。前回の提案書を材料に渡すと、そこに含まれる別の会社名が出力に紛れ込むことがある。
ミドリ: それは……致命的ですね。
タツヤ: 致命的。だから提出前に相手先の会社名で検索して、他社名が残っていないか確認する。30秒で終わるし、これで防げる事故は大きい。
効果の目安
ミドリ: 実際、どのくらい速くなりますか?
タツヤ: 型が整った状態での目安はこう。
| 工程 | 従来 | AI活用後 |
|---|---|---|
| 構成 | 60分 | 15分 |
| 文章 | 90分 | 20分 |
| デザイン | 120分 | 30分(テンプレ流し込み) |
| 固有情報の確認 | 30分 | 30分(変わらず) |
| 合計 | 約5時間 | 約1時間35分 |
ミドリ: 固有情報は変わらないんですね。
タツヤ(nodding): そこは減らしてはいけない部分だからね。実績・金額・相手の情報を確認する時間は、むしろ増やしてもいいくらい。効率化するのは作業、確認は残す。
提案の前後にも使える
ミドリ: 資料を作る以外にも、使い道はありますか?
タツヤ(nodding): ある。むしろ前後のほうが差がつくかもしれない。
提案前:想定質問を用意する
タツヤ: 資料ができたら、その資料に対する質問をAIに出させる。
ミドリ(surprised): 自分の資料に質問させるんですか。
タツヤ: そう。「この提案を受けた立場で、厳しい質問を10個作って」と頼む。自分では気づけない穴が見つかるんだ。
ミドリ(thinking): 味方ではなく、相手の立場で読ませると。
タツヤ: そこがポイント。しかも聞き手の立場を指定するとさらに効く。
「あなたは従業員50名の製造業の社長です。
コスト意識が高く、過去にIT導入で失敗した経験があります。
この提案資料を読んで、厳しい質問を10個してください。」
ミドリ: 具体的な人物像を渡すんですね。
タツヤ(nodding): 「一般的な顧客」だと当たり障りのない質問しか出ない。ヒアリングで分かった相手の性格や過去の経緯を入れると、実際に来る質問にかなり近いものが出てくるよ。
提案後:議事録から次の資料へ
ミドリ: 提案した後は?
タツヤ: 商談の記録から、次の資料に足すべき内容を抽出する。
- 質問が出た箇所 → 資料の説明が足りていない
- 話が長引いた箇所 → 相手の関心が高い、または不安がある
- 反応が薄かった箇所 → 次回は削っていい
ミドリ: 資料が回を追うごとに良くなっていきますね。
タツヤ(nodding): そう。提案資料は作って終わりではなく、育てるものなんだ。10件やれば、質問される箇所は共通してくる。そこを最初から資料に入れておけば、商談時間が短くなる。
ミドリ(smiling): 短くなるのはいいことなんですか?
タツヤ: いいことだよ。説明の時間が減れば、その分ヒアリングに使える。提案は説明する場ではなく、相手を理解する場だからね。
まとめ
タツヤ: 今日の要点を整理しよう。
- 資料作成が遅いのは構成・文章・デザインを同時にやるから。3工程に分ける
- 多くの人が①構成を飛ばして③デザインから始める。これが作り直しの原因
- 構成では各スライドの狙いを出させる。狙いが書けないスライドは削る
- 聞き手によって構成を変える。4通りの作り分けはAIの得意分野
- 見出しはそれだけ読んで提案が伝わるように書く。決裁者は拾い読みする
- デザインは6種類の型を1回作って使い回す。凝っても成約率には効かない
- 金額・実績・他社比較・相手の会社名は必ず人が確認。実績はAIに書かせない
ミドリ(smiling): 5時間が1時間半なら、提案の数を増やせますね。
タツヤ: そこが本当の効果だと思う。1件あたりを速くするのが目的じゃなくて、提案できる件数が増えるのが目的。空いた時間をヒアリングに回せば、提案の質も上がるよ。
次のアクション
ミドリ: 何から始めましょう。
タツヤ: 3つ。
- 自社テンプレートを6種類作る — 半日。1回作れば以後ずっと効く
- 次の提案で、構成案だけAIに出させる — スライドは作らせない。構成の質だけ見る
- 確認必須の4項目をチェックリストにする — 金額・実績・他社比較・会社名
タツヤ: Shimanto AI Solutionsでは、この仕組み化を支援しているよ。
- 提案書テンプレートの設計 — 自社の提案パターンに合わせた型を整備する
- 構成生成の型づくり — 聞き手別に構成を出し分けるプロンプトを業務に組み込む
- 確認工程の整備 — 事実に関わる箇所をAIの守備範囲から外す運用ルールを設計する
ミドリ: テンプレートからですね。
タツヤ: そう。型がないままAIを使うと、毎回違う資料が出てきて逆に混乱する。型が先、生成が後だよ。
情報の時点について
本記事は執筆時点(2026年8月)における当社の提案業務での実践に基づく整理です。所要時間は資料の内容と型の整備状況によって変わるため、目安としてお読みください。効果や優位性を示す表現については消費者庁の景品表示法に関する情報が一次情報になります。